「虹の会」の活動紹介
 虹の会は、1991年に設立された乳がんの患者会で、関西を中心に約300名の会員がいます。主な活動は、奇数月に実施する例会、毎週水曜日に事務所で行う無料相談(電話相談も含む)、講演会や勉強会、セカンドオピニオンのできる虹の会協力医療者の紹介、おしゃべり会、ハイキングや一泊温泉旅行、会報発行などです。再発転移者のみの情報交換の場も設けています。事務所では参考書籍を貸し出すほか、補正下着やウィッグ等のサンプルも用意しています。こうしたプログラムは、虹の会の目標である「自立した患者として明るく前向きに生きる」ことを達成するため、また患者さんの多種多様なニーズに出来る限り応えることを目指して、メンバーが話し合いながら少しずつ作ってきたものばかりです。小さいながらも自分たちの事務所を持ち活動の拠点となる場があることが、活動を維持する上で大きな意味を持っています。
 20代から30代の若い乳がん患者さんたちも少なからず入会されています。彼女たちの悩みや生活のしづらさは、他の年代の人達とは大きな違いがあります。そこで、例会のグループ分けを年代別にしたり、発症年代別(いま50代でも30代の時に発症していれば30代のグループに参加)にしたりするなど、若い方のニーズに応えるような工夫もしています。
 また、毎週水曜日に実施している電話相談では、「同じ年代の方はいらっしゃいますか」「同じ年代の人と話がしたい」という声が若い方を中心に寄せられています。そこで、「●月●日には若いメンバーが来る予定です」とHP上で広報できるようシステムを作ろうとしているところです。その日に電話すれば若い方と直接話ができるということは、大きな安心にもなり意味もあると思います。今後も恋愛や結婚、出産、仕事などたくさんの課題、背負っている荷をちょっとおろせるようなピアサポートをしたいと思っています。
 私たちにできることはまだ少ないけれど、他の患者会でどのようなプログラムを作り、どのような工夫をなさっているか、情報があればぜひお教えいただけたらと思います。
虹の会 田中伸子

  虹の会を訪問して
 とにかく豊富なプログラムを持つことに驚いた。よくうかがってみると、その維持にかなりの努力がされていることがわかった。活動の拠点となる自分たちの事務所を持つことが、いかに大きい意味を持つかということを実感した。代表の田中さんはもちろん、それ以外のコアメンバーも若年者のニーズをとらえて言語化できることがすごい。インタビューの最中も、どんどんアイデアを出し合っている。緒に就いたばかりではあるが、若年者向けのプログラムを作っていることに感激した。地域で活動しようと考えている患者会にとって、一つのモデルとなる会に違いない。


  「ぷちきらら(乳癌患者会友の会きらら)」の活動紹介
 「乳癌患者友の会きらら」の会員さんの中にも、若くして乳がんと診断され、手術やつらい治療を乗り越えて社会復帰している会員さんが何人もいます。私もそのひとりです。30代で乳がんと診断され、左乳房を摘出しました。
 乳房を失った悲しみに暮れる中で「乳癌患者友の会きらら」の存在を知り、そして私のように若年性乳がんの会員さんが他にもいることを知りました。共通点は、「未婚かつ30代で乳がんになったこと」初めて会うのに心が通い合う・・・そんな安心感を覚えました。毎日泣いていた頃の私のように、ひとりで病気を抱え苦しんでいる若い人がもっといるはず・・・他の患者さんのために力になれることを実行していこう!その思いが「ぷちきらら」誕生のきっかけとなりました。
 2009年10月に「乳癌患者友の会きらら」の中に若年性乳がんグループとして立ち上げ、これまでにおしゃべり会や食事会、日帰り旅行等を手探りの中で企画してきました。初めは緊張した面持ちで参加していた人が、回を重ねるごとに笑顔を見せ、いまでは「ぷちきらら」の活動を心待ちにしてくれる・・・そんな仲間を見ていて、若年性乳がん患者さんのサポートの必要性をあらためて感じています。
 病気のこと、仕事や恋愛のこと・・・同年代で同じ体験をした仲間だからこそ打ち明けられる話もあり、お互いの存在が励みになっているようです。「若いのにかわいそう」「若いからだいじょうぶ」そんな心無い周囲の言葉に傷つけられる若い患者さんも少なくありません。「私はひとりじゃない」そう心から思ってくれる仲間が一人でも増えることを願いながら、若い患者さんの笑顔がきらきら輝く場になるよう「ぷちきらら」の活動を続けていきたいと思います。
ぷちきらら 世話人 金田 有美子

  ぷちきららを訪問して
 グループ立ち上げの際、金田さんは自分の名前を出すことに迷いや不安を感じていたが、仲間の後押しで心が決まったという。若い患者さんたちの間ではインターネットでの交流が盛んだと言われているが、直接に会って交流することから得られる孤独感の解消、仲間と一緒に治療を頑張っていこうという気持ち、共にいるだけで得られる安心感は計り知れないものがあるに違いない。また、同じ経験をしてきた仲間だから、病気以外のことも心おきなく話ができるという利点もあるようだ。ぷちきららを訪問して、そのことが非常によく理解できた。設立されて日は浅いが、若い人向けのプログラムを少しずつ企画し着実に実現しており、今後も新しいプログラムを考えているらしい。


  より良いピアサポートをするために
〜若い乳がん患者さんが初めて患者会にアクセスしたとき〜
参加してくださったことをたたえましょう(心の中で)
 特に若い患者さんにとって、知らないところに電話したり、会に参加したりするだけでも、多くのエネルギーが必要です。まずはその勇気をたたえましょう。
例: 「こんにちは。会場はすぐにわかりましたか。よく来て下さいました」
「きょうはお電話くださってありがとうございます」

普通に接しましょう
 特別な言葉かけをする必要はありません。「お若いから〜」と若いことを意識しすぎる言葉かけは避けた方がいいかもしれません。若くて目立っていることは、ご本人が十分に承知しているし、これまでに若いということで辛い思いをされていることが少なくないからです。
例: 「この会のことは、どうやってお知りになったのですか」
「ご自分のことを話したかったら話してもいいし、きょうは他の人の話を聞くだけにしたい、ということであれば、それでも大丈夫ですよ」

あなたが生活している姿を見せることが、ピアサポートのはじめの一歩です
 がんと告知されたとき、多くの人は死を意識します。それぞれの治療法は異なっても、乳がんという同じ病気の人に会って話をし、その人が仕事をしたり家事をしたり普通に生活していることを知ることは、どんなにか勇気づけられることでしょう。インターネットや電話では得られない、対面だからこそできるピアサポートです。

参加者がひとりぼっちにならないようにしましょう
 患者会は50〜60歳代が中心であり、若い患者さんは共通の話題を見つけることが難しく、会の中に自分の居場所を見つけにくいとおっしゃいます。参加者がひとりにならないように心がけましょう。
例: 「こんにちは。よろしければ、この会のことを少しお話しましょうか」
「会の中に若い患者さんがいますが、お話を聞いてみたいですか」

否定しないで話を聴きましょう
 新人患者さんの体験は回り道や間違った道の選択の連続のように、先輩患者さんには見えるかもしれません。たとえそう感じても、まずは、じっと話を聴いてみましょう。
例: 「もし良かったら、お話を聞かせてもらえませんか」(後は相手のペースで一生懸命聞いていることだけを伝えましょう。アドバイスはダメです)

求められたときに、語りましょう
 患者として、また人生の先輩としての立場から、若い患者さんは心配な存在であり、あなた自身の経験に基づいて多くのアドバイスをしたくなることでしょう。でも、若いけれどその人なりに悩み考えながら生きてきたのです。それを十分に聴かないまま、また求められてもいないのに語りすぎるのは避けましょう。
例: 「私も若い時に発病したのですけど、何か聞いてみたいことはありませんか」
「何か欲しい情報がありますか」

「若い」というひとくくりでとらえることは禁物です
 未婚か既婚か、子どもの有無、就業の形態などその人の生活によって悩みは異なることが、若年の患者さんの特徴です。個別性を大切に考えましょう。

仲間と一緒にサポートしていきましょう
 あなたと同じように若い患者さんのサポートに関心のある仲間を見つけながら、少しずつできることから始めればいいのです。あなたは一人ではありません。

最終判断はご本人です
 定例会に一度参加して、その後現れない人がいたり、また、1回電話をかけてきたけれどその後は音沙汰がないという人がいても、それはその人が選んだことであって、あなたの対応やあなたの所属する患者会に問題があるわけではありません。
 大切なのは、もしまた訪ねたくなった時はドアを開けてお待ちしていますと知らせておくことではないでしょうか。もちろんスタッフの負担を考慮するならば、365日開けっ放しにする必要はありません。曜日や時間を決めて、その時間だけ開けておいたらいいのです。
 自分のことを安心して話せる場所があることは、若い患者さんにとってどんなにか心強いことでしょう。
 この「より良いピアサポートをするために〜若い乳がん患者さんが初めて患者会にアクセスしたとき〜」には、乳癌患者友の会きらら(広島)、虹の会(大阪)、マンマの会パセリ(宮城)の皆さんと一緒に考えて作成したものです。今後は他の患者会の皆さまとも情報交換して、さらなる工夫をしたいと考えております。