診断をうけた時点で、シングルの方も少なくありません。
乳がん治療をうけたあとに結婚し、子どもを持っている人も数多くいます。しかしその前段階として、大切な人に自分の病気やからだの変化のことをどのように伝えるか、考えておく必要があります。今、恋人がいる場合には、病気が二人の関係にあたえる影響を不安に思うでしょう。あるいは、素敵な相手と出会ったときに一体どのタイミングで打ち明けたらよいのか、悩むこともあると思います。
病気に限らないことですが、真剣なつきあいを考えるときには、お互いをよく知り、信頼関係を築いていく必要があります。
打ち明けるタイミング
多くの方が、素敵な出会いに恵まれたとき、「病気のことを伝えないままつきあい始めるのは後ろめたい」と話します。とはいえ、私たちは普段から相手との関係によって、つきあいの深さで話題を選んでいます。出会う人すべてに病気のことを話しているわけではありませんし、その必要もありません。つきあいが深まり始め、「この人には知っておいてもらいたい」と思ったら、そのときに話せばよいでしょう。アメリカがん協会編「がん患者の<幸せな性>」(春秋社, 2007)では、次のように書かれています。「出会って数分で話すのは、どう見ても早すぎます。一方、さあ、これからベッドインというときまで待ってしまうと、大変な事態を招きます。相手に対して、信頼感と友情を感じられるときまで待つのがいいでしょう。それは、相手があなたという人全体を好きになってくれている、と感じられるときです。」
相手に拒絶されるのではないか
病気のことを話したら相手に拒絶されるのではないか、という心配は当然のことです。相手から拒絶される前に自分から身を引いてしまうケースも少なくありません。いろいろ考えるうちに「やっぱりやめておこう」「もう別れよう」「彼に負担をかけたくない」と、自分だけで結論を出してしまっているのです。しかし相手の気持ちは聞いてみないとわかりません。現在の恋人でも、新しい出会いでも、あなたが心配していることを正直に話し、まず相手と一緒に考えてみることが大切です。
なかにはあなたが病気になったという事実を受けとめられず、去っていく人もいるかもしれません。とても残念なことですが、それはそれで、「ご縁がなかった」のでしょう。カップルの関係がうまくいかなくなる理由には病気以外にもさまざまなものがありますが、「パートナー」とは、あなたを丸ごと受けとめてくれる人のことです。多くの人たちが、診断や治療後に出会った人と幸せな関係をきづいていること覚えておいてください。
自分の長所を思い出そう
人によっては、その後の出会いに臆病になってしまうこともあります。自己規制して出会いを避けていれば拒絶されることはないかもしれませんが、同時に新たな出会いのチャンスを逃すのはもったいないことです。将来のパートナーとの出会いに限らないことですが、暮らしの中でさまざまな楽しみを増やし、活動やつきあいのはばを広げてみましょう。暮らしを楽しみ、自分らしさと心身のゆとりを保つことで、あなた本来の魅力を発揮することができます。
前出の「がん患者の<幸せな性>」では、この点を次のように書いています。「自分自身を友人としてみた場合にどんな長所があるか、リストを作ってみましょう。自分の見た目ではどこが好きですか?性格のよいところは?特別な才能や技能は?付き合っていく中でパートナーのプラスになるのはどんなところ?性的なパートナーとして優れているところは?デートをしない口実にがんを使いたくなったら、いつでも自分の長所を思い出してください。」
【参考図書】
アメリカがん協会編: がん患者の<幸せな性> 春秋社, 東京, 2008
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文責: 獨協医科大学公衆衛生学講座准教授 高橋 都