次に日本人若年乳がんの予後を調べるために日本乳癌学会癌登録データベースに登録されている1975〜2000年に手術を受けた146,690例のデータを解析しました。 |
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乳がん発症年齢と予後 |
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図14は解析した症例中、49歳以下の患者さんについて発症年齢ごとに予後(生存率)を生存曲線として表したものです。34歳以下の患者さんの生存曲線は、35歳以上の患者さんのものよりも下にあり、34歳以下の若年性乳がんの予後が不良であることがわかります。 |
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図14 乳がん発症年齢と予後 |
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若年性乳がんの予後 |
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次に34歳以下の若年性乳がんの予後を進行度(病期)別にみてみると、図15のように進行度が高くなるにつれて予後が悪くなります。そこで、若年者と非若年者の予後を、病期別に比較してみました。Ⅰ期、ⅡA、 B期、ⅢA-1期では若年性乳がん患者さんの予後は、非若年性乳がん患者さんと比較して、明らかに悪いことがわかりました(図16A-D)。しかし、IIIA-2、IIIB、IIIC期のように進行した患者さんでは、若年者と非若年者の間に明らかな予後の差は認められませんでした(図16E-G)。 |
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図15 若年性乳がん(34歳以下) の病期別生存率 |
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図16A-D 病期別 若年者と非若年者の予後比較 |
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【A I 期】 |
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【B IIA 期】 |
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【C IIB 期】 |
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【D IIIA-1期】 |
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図16E-G 病期別 若年者と非若年者の予後比較 |
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【E IIIA-2期】 |
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【F IIIB期】 |
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【G IIIC期】 |
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妊娠・授乳期乳がんの予後 |
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今回解析した患者さんのうち、乳がんの発症時に妊娠中あるいは授乳中であった患者さんが約1%いらっしゃいました。その妊娠、授乳期の乳がん患者さんの予後を、その他の患者さんと比較してみると、図17のように妊娠、授乳期の乳がん患者さんは明らかに予後が悪いことがわかりました。
図18は年齢と病期との関係をより詳細にみたものです。若年性乳がんのなかでも、特に29歳以下では、30歳以上よりもⅢ期以上の進行がんが多いようです。さらに、妊娠、授乳期乳がんでは他の患者さんよりもⅣ期が多いことがわかりました。これは妊娠期、授乳期に乳がんの発見が遅れてしまうことを示唆していると思われます。
次に、30-34歳の乳がん患者さんの中で、妊娠・授乳の予後に対する影響を調べてみました。図19のように、30-34歳の若年者においても、妊娠、授乳期の乳がん患者さんは他の患者さんよりも予後不良であることがわかりました。次に妊娠、授乳期乳がん患者さんを、妊娠期と授乳期に分けて予後を比較してみると、図20のように妊娠期よりも授乳期のほうが予後不良であることがわかりました。
図21は妊娠・授乳期乳がんの予後を病期ごとに解析したものです。Ⅰ期では10年生存率90%、ⅡA期で85%と妊娠・授乳期乳がん以外の患者さんの予後とほとんど変わりありません。従って、妊娠・授乳期乳がんの予後が悪いのは、進行期乳がんの割合が高いことと関連していると考えられ、早期であればそれほど予後は悪くないと考えられます。妊娠、授乳期の乳がんを早い時期に発見するには、妊娠中、授乳中の乳房のしこりや異常に関して、より注意していくことが必要と考えられます。 |
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図17 妊娠・授乳期乳がんと予後 |
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図18 年齢と病期 |
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図19 妊娠授乳期乳がんの予後(30-34歳) |
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図20 妊娠期乳がんと授乳期乳がんの予後比較 |
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図21 妊娠・授乳期乳がんの病期別予後 |
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