近年、上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition、以下EMT)が癌の進展に重要な働きをしていることが示されています。このEMTによって、癌細胞は移動性が増し周囲の間質に浸潤しやすくなります。その結果、血管内やリンパ管内へ浸潤し全身に拡がっていくと推測されています。このEMTという現象には、「上皮系」であることを表現する分子マーカーと「間葉系」であることを表現する分子マーカーがあり、これらを調節するシグナル因子もわかりつつあります。
本研究では、EMT関連分子の発現とさまざまな臨床理学的因子との関連を調べ、原発性肺癌や転移性肺癌の悪性度や進展におけるEMTの意義について後ろ向きに検証します。
◎対象
当九州大学消化器・総合外科(第二外科)において2000年1月から2009年8月までに原発性肺癌および転移性肺癌で手術をされた方を対象に研究します。
◎方法
1) | 診療録、画像情報、病理検査レポートから臨床データを抽出します。 |
2) | 手術切除標本を用いて、EMTに関与する様々なたんぱく分子や その調節因子などの発現を免疫組織化学染色法にて検討します。 |
3) | 以上のEMT関連分子発現と臨床病理学的因子との関連を検討します。 |
4) | また、EMT関連分子発現と術後の生存率との関連を検討します。 |
本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際には、患者さんを特定できる情報は一切含まれません。
もし、対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡下さい。
平成23年3月31日までの予定です。
本研究によって、EMTと肺癌の悪性度や進展における意義が明らかになれば、このEMT関連分子を標的にした新しい薬の開発が可能となり、医学上の大きな貢献になるものと考えています。
九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)
教授 前原 喜彦
准教授 調 憲
〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
TEL 092-642-5466