内視鏡外科・コンピュータ外科


【患者さんの体に優しい手術】

私たち内視鏡グループは、日々、内視鏡外科手術の手技(患者さんの体に優しい手術とはどんな手術か?例えば、傷の小さい手術など)や手術の体に及ぼす影響(なぜ、体に優しいのか?など)について検討し、新しい内視鏡手術器具の開発や手術方法について研究を行っております。

食道の病気に対する内視鏡の手術


食道癌は進行癌で発見されることが多いのですが、 定期的に消化管検査を受けられている方の中には、 早期発見がなされることがあり、こうした早期の癌に対しては内視鏡下粘膜切除治療(EMR)を 行っています。


胸腔鏡を用いた手術を積極的に取り入れ、術野の拡大視効果や創の縮小が得られており、患者さんにとって優しい治療を行うことができるようになりました。


胸腔鏡下腫瘍摘出術

良性の食道腫瘍に対して、胸に小さな穴を開けて胸腔鏡と細い鉗子を入れて腫瘍摘出を行っています。従来の大きく胸を切開して行う手術に比べると術後の痛みがはるかに軽く、日常生活への復帰も速くなりました。


胸腔鏡補助下食道切除再建術

比較的早期の食道癌に対しても胸腔鏡を用いることで、術野が大きく見えて、より小さな切開創で手術を行えるようになってきました。


腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術

高齢者に多い食道裂孔ヘルニア(食道と胃の接合部が、周囲の組織が弱くなることで胸の中にスライドしてヘルニアを起こし、胃液の逆流などのためにひどい胸焼けや嘔吐をきたす病気)に対して、腹腔鏡を用いてヘルニア修復術を行っています。小さな侵襲で手術が済み、食べ物のうっ滞や逆流症状がとれ、優れた治療効果が得られています。

胃の病気に対する内視鏡の手術


病変部の外科的な切除が必要ですが、大きく切除する必要は無く、小さな創で行う縮小手術で十分な場合は、内視鏡や腹腔鏡を用いた内視鏡外科手術が可能です。内視鏡外科手術が適応となる胃病変は、胃粘膜下腫瘍や早期胃癌です。お腹の創が小さくてすむために、術後は快復が速く、入院期間も短くてすみます。

病変の種類、性格によっていろんな手術方法があります。病変だけを切除する場合や周囲のリンパ節を一緒に取り除く場合、また切除する場所による違い、お腹の中に到達する手段の違い、再建方法の違いなどがあります。以下にその手術方法を簡単に示します。

到達手段の違い

胃をどの程度切除するか、以下のどの到達方法で行うかは限られてきます。以下の方法の違いは術後の傷の大きさや痛みの程度が異なり、腹腔鏡の手術の方が、手術自体の侵襲が少なくすみます。
■ 腹腔鏡下手術───腹腔鏡のみで手術を行います。
■ 腹腔鏡補助下手術─腹腔鏡と術者の手を用いて行います。
■ 開腹下手術────腹部を大きく開いて術者の手を用いて行います。


手術の傷の違い(一部の例です)


胃の病変種類、性格による違い

悪性度の高い病変は周囲のリンパ節を含めて切除しますが、悪性度の低い病変は病変のみを切除するだけでよいのもあります。必要に応じてリンパ節郭清を行います。
■ 胃粘膜切除───胃の内側の粘膜のみを切除します。
■ 胃部分切除───胃の病変のある部分を胃壁全部を切除します。
■ 胃幽門側切除──胃の肛門側を約2/3切除します。
■ 胃全摘出────胃を全部切除します。


大腸の病気に対する内視鏡の手術


私達は、できるだけ早期に癌を発見し、早いうちに癌を良い方法で治療するよう心がけ、日々手術法の改善、術前術後治療の改善、術前術後管理の改良等を行っています。その結果、治療成績は徐々に向上して参りました。当科では、最先端技術を用いた内視鏡治療を積極的に取り入れ、侵襲をなるべく少なくし、体に与える痛みを軽くして入院期間を短くしています。また、内視鏡手術以外にも術前の放射線照射療法、抗癌剤の多剤併用療法を行っております。


【腹腔鏡補助下大腸切除術】

従来の大きくお腹を切開する大腸切除術では、腹部に15~20cmの皮膚切開を加えて手術を行っていましたが、小さな穴をお腹に開けて、細い鉗子(径3~10mm程度)をお腹の中に入れて手術を行う腹腔鏡補助下大腸切除術を積極的に行っております。一つ一つの傷が小さいため、術後の痛みが少なく、そのため術後の回復が早く、入院期間が短く、美容的にも小さな傷ですみます。



肝臓の病気に対する内視鏡の手術


腹腔鏡補助下肝切除

近年、腹腔鏡手術が普及し、胆嚢摘出術を中心として各施設で腹腔鏡手術が行われています。この手術の利点として、従来の開腹手術に比べ手術侵襲が少なく、術後の回復が早く、入院期間が短くなるという事が挙げられます。肝臓グループでも、部位的に可能であれば、腹腔鏡を併用して小さな切開にて肝切除を行うようにしています。

腹腔鏡下肝切除術を施行した症例】

呼吸器の病気に対する内視鏡の手術


従来、胸を大きく切開して行っていた呼吸器外科手術にも、胸腔鏡が導入され、疾患によっては同じ手術が小さな傷で行えるようになり、術後の痛みも軽く、入院期間も短くなりました。


健康診断時の胸部レントゲン写真で早期の右肺癌が見つかり、治癒手術を行いました。

血管の病気に対する内視鏡の手術


胸腔鏡下胸部交感神経節切除術

胸部交感神経節切除術は上肢の慢性動脈閉塞症による指の潰瘍症例や、多汗症に対して行う手術で、以前は、約10cm位の切開を加えて手術を施行しており、術後の上肢の挙上障害などがみられる事もありました。しかし、近年、内視鏡、胸腔鏡の進歩により、皮膚を大きく切開する事無く、1~2cmの切開を3~4カ所に加えるのみで行う胸腔鏡下胸部交感神経節切除術が可能となりました。当科ではこれまでに14例の手術(2001年3月現在)を施行し良好な結果を得ています。この手術は低侵襲で、術後3~5日で退院可能です。

脾・門脈の病気に対する内視鏡の手術


腹腔鏡下脾臓摘出術
【対象となる疾患】

■ 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血などの血液疾患
■ 悪性リンパ腫などの脾腫瘍
■ 脾動脈瘤
■ 門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症

特発性血小板減少性紫斑病 (Idiopathic Tthrombocytopenic Purpura; ITP)

ITPは、血小板自己抗体という血小板を攻撃する因子を自分がつくり出し、それにより血小板が破壊されて血小板の寿命が短くなり、ひいては血小板の数が減って血が止まりにくくなる病気です。 治療としてはまずステロイドによる内科的治療が第1選択となります。ステロイドでの治療効果が得られない場合は脾臓摘出術の適応です。 当科では腹腔鏡下脾臓摘出術を行っていますが、この治療効果は約8割もあり、きわめて効果的です。

門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症

脾機能亢進症の患者さんの脾臓は腫大しカボチャくらいの大きさになることがあります。そのため、血小板数が減少し出血しやすくなったり、そのために肝癌の治療ができなかったり、C型肝炎に対するインターフェロン治療の導入ができないこともあります。このような患者さんに対して腹腔鏡下に手術を行えば、上記のように小さな創で摘出できるのです。脾機能亢進症の患者様の手術の場合、写真のような大きな創でないと、手術が難しいことがあります。



C型肝炎の患者さまに朗報!

C型慢性肝炎・肝硬変症に対するインターフェロン療法(IFN療法)は、ウイルスの駆除だけでなく肝硬変症の進展や肝細胞癌の発生の抑制において、重要な治療法です。しかし、脾機能亢進症のために血小板数や白血球数が減少している場合は、IFN療法の導入ができなかったり、途中で治療を中止せざるを得なくなることも起こります。
血液疾患の患者さまだけでなく、C型慢性肝炎・肝硬変症における脾機能亢進症に対しても、腹腔鏡下脾摘術を積極的に導入しており、現在までに117例の患者さまに行っており、これは日本一の症例数です。血小板数や白血球数は、術後長期にわたり正常レベルが維持されていることがわかります。したがって、IFN療法の導入が可能となるわけです。


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